とねあざみ (利根薊)

 学名  Cirsium incomptum (C.comosum var.incomptum, C.comosum, C.nipponicum var.incomptum)
 和名  トネアザミ  
 科名(和)  キク科 
  別名(和)  タイアザミ 
 漢名   
 科名(漢)   
  別名(漢)   
 英名   

2007/08/31 群馬県 浅間高原

2008/08/29 長野県軽井沢

2011/08/15 長野県霧ヶ峰

 タイアザミ・トネアザミ・ナンブアザミなどの分類上の取扱いには、移り変りがあるようだ。

◎『改訂増補 牧野新日本植物図鑑』(1989)は、「トネアザミ(タイアザミ) Cirsium incomptum」について次のように解説していた。即ち「この植物はタイアザミと呼ばれてきたが、これは漢名大薊の日本読みである。秋咲きのいろいろなアザミをタイアザミと総称したこともあり、また中国でいう大薊(エゾノキツネアザミ)はこれとは異なるので、北村四郎により改めて利根薊とされた。この名は群馬県水上に因む」と。これに対してナンブアザミ(ヒメアザミ)は Cirsium nipponicum var. nipponicum とされていた。

◎『日本の野生植物』(1981,北村四郎執筆)は、これらを Cirsium nipponicum に纏めていた。
   ナンブアザミ      Cirsium nipponicum
     トネアザミ(タイアザミ) var. incomptum
     イガアザミ var. comosum

◎『改訂新版 日本の野生植物』(2017,門田裕一執筆)は、これらを次の如く整理した。
   キタカミアザミ Cirsium nipponicum(Cnicus nipponicus)
   ナンブアザミ(トネアザミ) Cirsium tonense (C.makinoi,
         C.nipponicum auct. non Maxim., C.nipponicum var.amplexicaule,
         C.nipponicum var.lanuginosum, C.nipponicum var.nipponicum
         f.languinosum, C.sendaicum var.amplexicaile)
   タイアザミ(イガアザミ,ハコネアザミ) Cirsium comosum (C.comosum var.sawadae,
         C.nipponicum var.incomptum, C.suffultum var.incomptum,
         Cnicus comosum, Cnicus suffultus var.incomptus)
 
解説に曰く、「ナンブアザミにはこれまで Cirsium nipponicum (Maxim.) Makino という学名があてられてきた。しかし、このアザミは頭花が直立して咲くもので、従来のナンブアザミの概念とは合致しないことが明らかになっており、キタカミアザミの和名があたえられている。トネアザミ C. tonense Nakai の基準標本は群馬県みなかみ町より得られたもので、・・・いわばナンブアザミの狭葉型である。このため、C.tonense Nakai がナンブアザミの概念に一致し、その最も古い学名となる。」と。

国立科学博物館植物研究部「日本のアザミ」(門田裕一)は、次の種・変種を立てる。
    〔本譜の記述はこれに従う。〕

  キタカミアザミ C. nipponicum
青森・岩手に分布
         
「葉が羽状中裂し,中型の頭花を上向に咲かせる」
  トネアザミ(タイアザミ) C. incomptum
東北南部から中部地方、太平洋側に分布
         
「関東~中部地方にもっともふつうのアザミで,葉が羽状に深裂し,
         
中型の頭花を下向きに咲かせる」
         
〔「日本のアザミ」がトネアザミとして載せる頭花の写真は、
         
『改訂新版 日本の野生植物』がタイアザミの名で載せるものと同一写真。〕
    イガアザミ var. commosum
海岸型、千葉・東京・神奈川・静岡に分布
         
「トネアザミの海岸型で,歯(ママ)の質が厚く鋭い光沢がある」
    アブクマアザミ var. abukumense
阿武隈高地特産
  ナンブアザミ C. makinoi
東北地方~中部地方、主に日本海側に分布
         
「東北地方で最も普通のアザミで,花期に根生葉がなく,中型の頭花を下向きに咲かせ,
         
総苞内に腺体があって総苞は少し粘る」
         
「葉の切れ込みには変異が多く,東北地方北部では鋸歯縁になるものが多いが,
         
南に行くにしたがって切れ込みが深くなる.」
    シロウマアザミ var. shiroumense
長野県白馬村産
         
「超塩基性岩地の植物で,頭花が小型で紫色を帯びる」
      

 タイアザミの語源については、上記の『改訂増補 牧野新日本植物図鑑』説のほか、『改訂新版 日本の野生植物』は次のように記す。すなわち「和名のタイアザミの語源はよくわからない。中国から漢方薬として伝えられた〈大薊(たいけい)〉に似た日本産のアザミとして、〈タイアザミ〉と訓読みしたのではないだろうか。なお〈大薊〉の基原植物はカラノアザミである」と。
 別に「痛い薊」の転訛とする説がある。
 なお、漢名を大薊(タイケイ,dàjì)という植物については、アザミ属の誌を見よ。

 
嶋田曰:タイアザミを大薊の日本読みとする推測は、難しいように思われる。大薊は、本草学者なら呉音でダイケイと読みそうなものだ(重箱読みするにしても、ダイアザミか)。   

 本州(東北地方南部~中部地方)太平洋側に分布。「関東~中部地方に最も普通のアザミで,葉が羽状に深裂し,中型の頭花を下向きに咲かせる」(「日本のアザミ」)。
 雌性両全性異株。 

  


跡見群芳譜 Top ↑Page Top
Copyright (C) 2006- SHIMADA Hidemasa.  All Rights reserved.
クサコアカソウ シュロソウ スハマソウ イワチドリ チダケサシ 跡見群芳譜トップ 野草譜index